The Lc Journal

このブログでは、ブランドや人物の背景にあるストーリーを深掘りして紹介しています。少しでもその歴史や魅力を知って、もっと好きになってもらえたら嬉しいです。

【マルタン・マルジェラ×Martin Margiela】

マルタン・マルジェラMartin Margiela)は、ファッション業界の中で非常に独自の道を歩んできたベルギー出身のデザイナーであり、その名前は彼の手掛ける「解体と再構築」の美学と密接に結びついています。

彼のキャリアとスタイルにはいくつかの注目すべきポイントがあり、それが彼の伝説的な地位を確立する要因となっています。

  • 背景とキャリアの始まり
    - **出身と学歴**:マルジェラは1957年にベルギーのルーヴェンで生まれ、1979年にアントワープの王立芸術学院を卒業しました。この学校は、後に「アントワープ・シックス」として知られる一群の才能あるデザイナーを輩出したことで有名です。
    - **ジャン=ポール・ゴルチエとの仕事**:1980年代初頭、マルジェラはファッションデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエJean-Paul Gaultier)のもとでアシスタントとして働いていました。ゴルチエの影響は後のマルジェラのデザインにも見ることができますが、彼はゴルチエの劇的なスタイルとは異なる方向性を追求しました。
  • Maison Margielaの創設
    1988年、彼は自身のブランド「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」を設立しました。このブランドは、伝統的なファッションに対するラディカルなアプローチで注目を集めます。彼の作品は、単なる衣服ではなく、ファッションそのものを問い直すものでした。
  • マルジェラの美学
    - **解体と再構築**:彼のデザインは、古い衣服を解体し、新しい形に再構築するという独自のプロセスに基づいていました。この手法は、ファッションの素材や形式に対する従来の考え方を覆すもので、業界に新風を吹き込みました。
    - **匿名性とコレクティブな制作**:マルジェラは自身の名前や顔を前面に出すことを避けました。彼はメディアの取材を受けず、写真に撮られることを拒み、ショーの後にも表舞台には現れませんでした。さらに、彼のアトリエは「コレクティブ」と呼ばれ、デザインプロセスにおいても匿名性が重視されました。これにより、ブランドそのものがクリエイティブな表現の中心に置かれました。
    - **白いペイントとラベル**:マルジェラのブランドは、白を象徴色とし、ラベルには文字を入れず、服には白いステッチが施されていました。これもまた匿名性を強調するための工夫でした。
  • 代表的なコレクション
    - **1990年代**:初期のコレクションでは、ヴィンテージ素材や不要となった衣服を用いて新しい服を作り出し、ファッションのサステナビリティを先取りするような作品が多く発表されました。また、体の形状を覆い隠すようなオーバーサイズのシルエットも特徴の一つでした。
    - **「デフィレ」ショー**:彼のショーは従来のファッションショーとは異なり、例えば廃墟や駐車場のような非伝統的な場所で行われ、ショーそのものがアートの一部として捉えられました。
  • マルジェラの影響力
    マルタン・マルジェラは、ファッションの文脈で「デコンストラクション(解体主義)」を代表するデザイナーとして知られています。彼の革新的なアプローチは多くのデザイナーに影響を与え、現代のファッションにおいても彼の遺産は生き続けています。また、彼の哲学は、消費主義に対する疑問や、サステナブルファッションの議論においても重要な位置を占めています。
  • 引退とその後
    2009年、マルジェラはデザイナーとしての活動から退き、以降は公の場にほとんど姿を現していません。ブランドはその後も継続されており、2014年からはジョン・ガリアーノJohn Galliano)がクリエイティブ・ディレクターを務めています。ガリアーノはマルジェラの哲学を受け継ぎながらも、自身のスタイルを融合させた新たなクリエイションを展開しています。
  • マルジェラの遺産
    マルタン・マルジェラの作品や哲学は、ファッションデザインの枠を超え、現代アートポップカルチャーにも影響を与えています。また、彼の姿勢は、多くのクリエイターに対して「作り手」としてのアイデンティティを問い直す機会を提供してきました。

マルジェラの謎めいたキャリアと、その美学の独自性は、彼を単なるデザイナー以上の存在に押し上げ、ファッション界において特別な存在としての地位を確立しています。